朗読会に行く楽しみは、朗読を聴くことはもちろん
どんな作品を読まれるのかということにもあります。
「朗読は作品紹介である」というのは
語り・朗読「宙のサカナ」代表 野口和夫さんのことば。
まさにその通りだなと感じます。
読みを聴くことはもちろん
朗読者がどんな思いをこめて、この作品を選ばれたのか?という背景を考えることも朗読会の楽しみのひとつです。
今回伺ったのは「朗読の場」という朗読会。
作品紹介を中心にレポートいたします。
1.笹原留似子作「おもかげ復元師」より
・あんたは本物の娘だよ
朗読者:田中桐子さん
復元納棺師である著者の実体験に基づくお話。
朗読者田中さんは、著者が復元納棺師として、故人がどんな状態にあったとしても、生前と同じ表情、できるだけ微笑みをたたえたお顔に戻すことにこだわっていることを表明している部分を読まれてから、個々のエピソードを読まれました。
そのおかげで、著者の想いがよく伝わってきたと共に、田中さんがこの部分に共感し感動していることがよく伝わってきました。
こういう工夫はとても素晴らしいですね。田中さんが何に感動されてこの本を選ばれたのか、よく伝わって心打たれました。
全編読んでみたくなった作品です。
出版社公式サイトも是非ご覧下さい。
参考
おもかげ復元師ポプラビーチ
2.小川未明作「野ばら」
朗読者:原田将鷹さん
「野ばら」と聞くと、ついついシューベルトが浮かびますが、こちらは童話。
戦争によって友情を引き裂かれる、切ないお話。
夢の中でばらの香りをかぐ青年。現実世界で枯れるばら。直接的な表現はないままに、胸が締め付けられるような悲しさが残る作品。
劇団に入団してまだ1か月、朗読を披露するのは初めてという今回最年少でもある20歳の原田さん。とても練習されたのだと思います。初めてとは思えないほど、素敵な声で堂々と読み上げ、一生懸命練習されたことが伝わってきました。なぜこの作品を選ばれたのか、お聴きすればよかった!とちょっぴり後悔。
作品が気になった方は青空文庫で読めますよ!
参考 野ばら青空文庫3.野坂 昭如作「焼跡の、お菓子の木」
田川の民話より「猪うち勘三郎」
朗読者:永末久美子さん
偶然にも続いて切ない戦争のお話。
人前で朗読をするのが久しぶりだという永末さんでしたが、落ち着いた読みをご披露いただきました。優しい声で語られる、戦争の辛い話。そのギャップに切なさが増してきます。戦争という残酷な舞台を背景に、このような童話を描ける野坂 昭如氏の想像力の豊かさに驚きました。
「猪うち勘三郎」は筑豊地方の民話。方言たっぷりに語られる民話は聴いていて心地よく大好き。それにしても、筑豊地方の方言の難しいこと!
4.新美南吉作「ごんぎつね」
朗読者:時佐克哉さん(劇団「TOKISA」代表)
「ごんぎつね」といえば真っ先に黒井 健さんのイラストが頭に浮かんできます。
今回は絵本なしでしたが、落ち着いた時佐さんの読みに乗せて頭の中で絵本をめくっていくようでした。
ちなみに時佐さんは先に読まれた原田さんが所属する劇団の代表。お弟子さんに朗読を聞かれるのは一番緊張するそうですが、そんな緊張をつゆほども感じさせませんでしたよ!
優しいゆったりとした空気を作りだすところはさすがでした。
こちらも青空文庫で読むことができます。(私は絵本をお勧め。かすや昌宏さんの絵も素敵です)
参考
ごんぎつね青空文庫
5.戦艦大和の護衛艦「涼月」と「冬月」の実話より「スズツキ イヅコ・・・」
朗読者:中嶋かつ子さん
護衛艦「涼月」と「冬月」の実話を基に朗読者の中嶋かつ子さんご自身が編集されたお話を聞かせていただけました。
護衛艦「涼月」が「沖縄特攻作戦」の戦艦大和の直衛艦として出撃し、奇跡の生還を遂げるまでの壮絶な話。オーシャンドラムを片手にしっとりと・・・。
ご自身で編集されたお話というだけあって、言葉の熱量を感じ胸に染みます。
若松に軍艦防波堤があることを恥ずかしながら存じ上げず、もっと詳しく知りたいと思いました。まずは直に観に行ってきます。
軍艦防波堤については下記サイトに紹介されていました。興味のある方はご参考に・・・。
今回の朗読会、偶然にもしんみりするようなお話がそろいました。
時間帯が夜であったことも、作品選びに影響するのかもしれませんね。
気になる本がありましたら、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。
声に出して読んでみたくなった方、どうぞ「声磨き講座③美しい日本語を読む」にもお越しください!
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